平成15年度第1回インプラントセミナー
  平成15年5月10日開催
  タカラ大阪本社3階会議室
講師 中島 康 (大阪府高石市開業)  
                      
Summary
 ITIインプラントの歴史、基本概念、埋入法、上部構造装着の時期、 術前術後のプラークコントロール、リコールの重要性、インプラント周囲炎の処置等について解説した。

Clinical Topics
1) SubmergedとNon-submerged
インプラント体とアバットメントの連結部のレベルが治癒の間、粘膜下にあるものをSubmergedと言うが、現在の一般的な適応症は以下の通りである。
Submerged:審美領域、GBRケースで行なう。
ただし、ジョイント部 はBiological Widthを考慮する。通常2回法である。
Non-submerged:非審美領域で行なう。Immediate loadingが可能。        通常1回法。インプラントの上皮付着はジョイント部より下方で止まる。従って、予後を推量すると non-submergedの方が有利である。
2) Press Fit
インプラントが初期安定性を達成するということは、皮質骨に圧が加わった状態になる。圧が加わった部分では、血管の圧迫による虚血が生じ骨のネクローゼを起すが、その後、オステオインテグレーションが達成される。したがって、皮質骨に極力コンプレッションを加えないようにするためには、プレタップが必要となる。
また、埋入の最終段階でフィクスチャ−に過度の力が加わらない様配慮が必要。
(編者注:ブローネマルク、3I等では、トルクコントロール下にてITIとは異なった径のドリルを用いてドリリングの後、埋入操作を行なうため、現時点で余り論じられる事はない。)
3) SLA
ITI独自のチタン表面処理でSand-blasted,Large grid,Acid-etched の略。術後6週で咬合負荷が可能と言われている。GBR等を併用する場合は、通常の治癒期間(4−6ヶ月)を要する。
4) Recall interval
通常の歯周炎のリコールに準じるのが妥当である。
即ち3,4ヶ月 に一度とする。
1回のリコールに要する時間は。
診査診断       10分
モチベーションTBI  5分
機械的清掃      30分
歯面研磨、フッ素塗布 10分
歯科医師による確認   5分
計          60分
決して簡単に行なえるわけではなく、自ずと患者数の許容限度 を推し量る事が出来る。
5) インプラント周囲炎
歯牙周囲の歯周炎と異なるのは、細菌性炎症が直接骨に波及し、破骨細胞が活発化して骨炎、骨髄炎の様相を呈する。これは、プラークを除去した後の状態でも同じであり、軟組織による防禦機構が存在しない。従って、骨の吸収は早い傾向が考えられる。
6) CIST:Cumulative Interceptive Supportive Therapy
インプラント周囲炎の診断と治療方法マニュアル
次ぎのClinical Parameterを使用して診断する。

* PII       プラークインデックス
* BOP       プロ−ビング時の出血
* Supp      排膿の有無
* PPDmm     プロ−ビングポケットデプス
* RXDefect  X線による透過像の程度

CIST modalities:治療は以下の方法を組み合わせて行なう。
A: Mechanical cleaning (rubber cap,polishing paste)
B: Antiseptic therapy(0.1-0.2%CX irrigation)
C: Antibiotic therapy
 1: Systemic:Amoxicillin
 2:Local:Slow release devices TC fiber (伊吹 薫)
D: Surgical approach
 1: Regenerative surgery
 2: Resective surgery
E: Explantation

CISTの応用チャート

Clinical parameters

PII BOP Supp PPDmm RXDefect Classification CIST
+/− _4  0 (A)
+ _4 A
+ +/− 4_5 A+B
+ _5 ++ A+B+C
+ +/− _5 +++ A+B+C+D
+ + _5 ++++ E

以上のような治療法を選択し、適切に対処することが重要である。

 ヨーロッパで販売されているテトラサイクリン含有の繊維。本邦では承認されていない。歯頚部に圧拝の手法で挿入し、生体用アロンアルファにて固定。約1週間ほどで除去し、消炎された状態でSRPを行なう。