顎関節症
顎関節(がくかんせつ、あごかんせつ)はどこにあるの?
あご(顎)の関節(顎関節:がくかんせつ)は左右の耳の前にあり頭蓋骨と下あご(下顎:かがく)の間にある小さな関節です。この関節は会話や食事の際などに下あごを動かす時に働きます。
顎関節症とは?
顎関節症はこのあごの関節に痛みを感じたり、偏頭痛や耳の痛みを感じたり、顎の周囲の筋肉が痛くなったりします。その結果、口が開きにくくなったり、痛くてあごが動かしにくくなる病気です。また、あごの運動に引っかかりを感じると供にあご関節でカックンという音が鳴ったり、ガリガリと硬いものがこすれるような音がしたりする事もあります。
顎関節症はどうして起こるのでしょうか?
喰いしばりなどの原因であご関節に強い力が加わることによって起こってきます。この喰いしばりはさまざまな原因で発生してきます。例えば、精神的ストレスや首から頭にかけての痛みや違和感などによっても喰いしばりは生じますし、また、声楽などで大きな口を開ける人やスポーツなどで大きな力を使う人にも生じてくることがあります。また、このような喰いしばりは夜間の睡眠中に起こっていることが多く、しばしば朝起床時に口の開けにくさに気付きます。
このように強い喰いしばりが起こりますと、あご関節の上下の骨の間にある関節円板の位置がずれてしまい、口を動かすとカックンという音が鳴ることがあります。また、この時しばしば痛みを感じることもあります。このような音が鳴らなくて、あご関節の引っかかり感を伴った強い痛みで口が開けられなくなることもあります。
顎関節のまわりの筋肉に起こる問題もあります。
顎関節症の原因は主として強く喰いしばることですから、咬む筋肉に力が入りすぎて筋肉痛を起こしています。筋肉痛を起こしている筋肉はストレッチすると痛みますので大きく口を開けにくくなります。
また、筋肉痛あるいは筋肉のだるさが、さらに寝ている間に強い喰いしばりや歯ぎしりを引き起こしてしまうことがあります。こうして、喰いしばりと筋肉痛の悪循環を引き起こしてしまいます。
また、強い喰いしばりは同時に関節内部にも大きな力を与えることになり、関節の炎症を起こしたり関節円板のずれにつながることもあります。
顎関節症の検査はどのようなことをするのですか?
このような症状が現れたとき、口腔外科医に相談してください。
まず、診察やレントゲン検査などをとおして本当に顎関節症かどうかの診断をします。そして、顎関節症の中のどのような状態かを診断して治療計画をたてます。また、必要に応じてCTやMRIなどの検査をおこなったり、他の専門医を紹介したりします。
どのような治療をするのですか?
飲み薬などの簡単な治療から複雑な手術まで病状にあわせて治療を行います。
多くの場合、消炎鎮痛剤と筋弛緩剤などの薬を飲む治療とスプリントと呼ばれるマウスピースを用いた治療を行います。場合によってあご関節に注射をすることもあります。また、喰いしばりの原因をなくすように努めていただかなくては治療効果が上がりませんので、ストレスや生活習慣などについてカウンセリングを行う場合もあります。
このような治療で症状の改善がみられない場合には手術による治療が必要かもしれません。
手術法には顎関節鏡(整形外科で診断と治療のために膝関節などで用いられているのと同じ方法です)による手術かまたは皮膚切開によって直接関節組織を治す手術方法などがあります。
日常生活で気を付けることは?
治療中には硬い物やよく咬まなければならない物を食べるのは控えて下さい。
症状を悪化させるようなことも控えて下さい。
また、あごに大きな力がかかること、例えば頬づえや首の牽引治療なども顎関節に悪い影響を与えます。もし、首の牽引治療が必要な場合があれば口腔外科医に相談して下さい。
そして、精神的なストレスもできるだけためないようにして下さい。顎関節周囲の筋肉をほぐすために、お風呂などで関節部を暖めた上で口を大きく開けてくいしばる筋肉をストレッチするのは効果的です。ただし、顎関節部があまり痛まない程度にして下さい。
また、寒い時期には喰いしばりが生じやすく、顎関節症が発症しやすいですので、暖かくするようにして、日常で喰いしばることをできる限り避けてください。
治療にはどれくらいの期間が必要ですか?
顎関節症は一度おこるとなかなか治りにくい病気です。短い場合でも2週間程度、長い場合には1年を越す治療期間が必要なこともあります。
従って、あせらずに気長に治療して下さい。