埋伏歯
歯は時期が来ると決まった場所に生えてきますが、その時期を過ぎてもあごの骨の中や歯ぐきの下に埋まったままのことがあります。このような状態の歯を埋伏歯と言います。
埋伏歯は、歯全体があごの骨の中にうまっている完全埋伏歯と、歯の頭(歯冠)の一部が口の中に出ている半埋伏歯とに分かれます。
歯が埋伏する原因はいろいろとありますが、歯が生えるスペースが不足していることが一番の原因です。
現代の子供たちは柔らかく調理された物ばかりを食べているので、あごがあまり発達しません。言い換えれば、現代人はあごが小さくなってきているのです。
あごが小さいと、後になって生えてくる永久歯ほど生えるスペースが不足しがちになります。だから、上あごの糸切り歯(犬歯)や一番最後に生える親知らず(第三大臼歯、智歯)に埋伏歯が多く見られるのです。
また、正中過剰歯と言って、上あごの真ん中に1~2本通常より多く歯ができることがあり、この歯も埋伏している場合が多く見られます。
埋伏歯はやっかいもの?
一般に、完全埋伏歯はあまり不快な症状はありません。
ところが、半埋伏歯では口の中に歯の頭が出ているので、口の中を不潔にしているといろんな症状が出てきます。
特に親知らずは歯ブラシが届きにくく不潔になりやすいので、一番のやっかいものです。
20歳過ぎで、奥の歯ぐきが腫れたり、痛んだり、また、口が開きにくくなったりしたら、親知らずが原因かな?と疑ってください。
また、7歳ごろ上あごのまん中の歯(中切歯)が生えてきますが、しばらくしても左右の歯同士がくっつかずに真ん中ですきまの開いているケースがあります。正中過剰歯の埋伏が原因のこともありますので、一度レントゲン写真で調べてもらえばよいでしょう。
それ以外にも、埋伏歯からまれに嚢胞や腫瘍が出来ることがあり、それらが大きくなると、顎の骨をとかしたり、神経を圧迫したりするので注意が必要です。
症状がなくても抜かなくてはいけないの?
必ずしも抜かなくてはいけないということはありません。
いつ埋伏歯に不快な症状がでてくるかは正確にはわかりません。
でも、半埋伏歯の場合は将来必ずと言ってよいほど症状がでてきますので、抜歯することになるでしょう。
完全埋伏歯の場合は定期的なレントゲン撮影によってチェックすれば良いでしょう。
いつ抜歯するのですか?
完全埋伏歯では先ほど言ったように定期的にレントゲン写真を撮影し、他の歯や神経に悪影響を及ぼしそうな時、嚢胞や腫瘍が出来ている時に抜歯します。
半埋伏歯の場合は、ほとんどのケースが抜歯の対象となりますので、出来るだけ早い方が良いでしょう。
というのは、若い頃は歯の根が未完成で比較的抜きやすい形をしている、骨が柔らかいので抜きやすい、抜いた後のキズが治り易い、等の理由からです。
特に女性は、妊娠中に症状がでると、薬が使いにくかったり、精神的にも負担となりますので、妊娠前に抜歯しておくほうが良いでしょう。
抜歯は痛いんじゃないの?
大丈夫です。ほとんどの場合は局部麻酔で抜歯しますが、適切な麻酔を行えば痛みはありません。どちらかといえば、抜歯している間、大きな口をあけてもらうことが苦痛といえるかもしれません。
抜歯した後どんな状態になりますか?
個々の歯によって異なりますが、一般的には、患部が腫れたり、一時的に痛みが出たりします。親知らずの場合では口が開きにくくなるため食事がしにくくなったりします。
でも心配はいりません。経験豊かな口腔外科医が適切なアドバイスや投薬で術後の不快な症状を取り除いてくれるでしょう。